「巡る刻」
あらすじ

六百年前の尾道。
阿弥は烏天狗と出逢い、秘かに恋心を抱いていた。一方、烏天狗は亡き恋人・おつるに会うために尾道に伝わる四神伝説・操刻の力を使おうとしたが失敗。刻の守り神「黄龍」によって記憶を奪われ、異世界に閉じ込められてしまう。それを見ていることしかできなかった阿弥は、心を傷めて時空を彷徨うことに――

時は流れ、現代。
「尾道異空観光社」の人気ガイドとなった阿弥は、異世界ツアーで「刻の玉」を集めていた。阿弥が案内するツアーに同行した烏天狗は、少しずつ記憶を取り戻し……?
六百年の刻を超えた恋愛戯曲。

現代では尾道異空観光社の人気ガイド。もとは女形を得意とする能楽のシテ方。

人間としては千二百年前に死亡しているが、時空を超える霊魂として尾道の芸術家達を見守り続け、記録を取ることに専念している。そんな折、石工だった頃の烏天狗と出逢い惹かれ、打ちひしがれる彼のために操刻の力を教えるが……。

自分を神だと吹聴しているが、周りからは妖怪だと思われている元・石工。

恋人に先立たれ失意のあまり山に籠もっていたところ、阿弥により操刻の力を知る。過去に戻り恋人を救おうと玉集めに苦心するも、最後の玉が見つからずに偽物を造型。これが黄龍の逆鱗に触れ、記憶を奪われ時空に閉じ込められてしまう。

おつる

烏天狗の想い人。不治の病により若くして亡くなってしまったため、烏天狗は悔いている。

神の御霊

霊魂として、不遇な過去を持つ阿弥を見守っている。時折さまざまなモノに憑依し、阿弥に言付ける。

四神

山々に宿る神々で、尾道を四神相応の地として繁栄させた。その力は現代にもおよび、さまざまな伝説を残している。

黄龍

四神を司る絶対的存在。自由自在に刻を操る力を持ち、尾道の地に眠る「四神の玉」を集めてきた人間には、その力を一度だけ授けると言われている。

尾道異空観光社

はるか昔から全国各地から多くの商人が往来し、港町や商都として栄えてきた尾道。当時建立された数々の神社仏閣は、今もこの地を見守り続けている。
懐古の土地の歴史や文化的背景をもとに、尾道異空観光社は「異世界ツアー」を提供している。脈々と刻まれてきた歴史から派生する「if」を追体験することで、尾道の新たな観光資源の創出および知られざる歴史の解明の役割も担う。

西 暦
飛鳥時代
616浄土寺創建
奈良時代
729西國寺創建
平安時代
795阿弥、京にて出生
800阿弥、雅楽寮に入寮
806千光寺開基・艮神社創建
810京で薬子の変勃発。阿弥、尾道へ下向
830全国的な疫病・飢饉の流行、阿弥、尾道三山で祈願→黄龍に認められ時空を超える方法を授かる
901菅原道真、大宰府に流される道中、尾道に立ち寄る
1169平重衡の奏上により尾道港が大田庄の倉敷地として公認される
鎌倉時代
1287久保沖の中州に、時宗開祖一遍上人が草庵を構える(海徳寺)
1309時宗第二祖・他阿真教上人が常称寺を創建
1313尾道鍛冶三原正家が他阿真行上人に小刀を献上。「其阿弥」の号を賜る
1327浄土寺本堂再建。翌1328年多宝塔再建。尾道商人の寄進と伝わる
室町時代
1367天寧寺開基
1374観阿弥・世阿弥、京の新熊野神社にて足利義満に猿楽能を披露
1388天寧寺海雲塔建立
1389足利義満、厳島神社参詣の帰途、天寧寺参詣。阿弥、能楽を披露
1390千光寺の信徒が熊野詣。阿弥、ガイドとして同行。観光社の起こり
1410堺にて、阿弥と石工(のちの烏天狗)が出会う
1415石工、尾道移住。「おつる」と出会う
1420石工、おつると死別。千光寺の夫婦岩に烏天狗の刻印を残し、山中に籠る
1422阿弥、石工に時空を超えられる方法を伝える。石工、5つ目の球を偽作。記憶を失い、霊魂のみの存在として、時空に閉じ込められる
1429西國寺三重塔建立
1590大坂城の築城に当たり、尾道の山から切り出された石材が船で運ばれる
1741住吉浜築造。北前船を介した交易が盛んとなる
1824尾道最古の玉乗り狛犬が製作される(厳島神社境内)
1830橋本家所有の地(現在地)に観光社の社屋(屋敷)が完成
1891山陽鉄道(JR山陽本線の前身)が尾道駅まで延伸。山手に民家が建ち始める
1921「みはらし亭」が建てられる(尾道の茶園建築)

 ※この戯曲はフィクションです。

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